老人からの贈り物


「本当によかったね、家の中をそこまでもっていってくれて、本当によかった」


・・・と保健婦さんにいわれたときは、自分では当然のことをしてきたまでだ、と思うと同時に、嫁さんのこころにまでその余韻が伝わったんだな、と安心しました。


その後、いく日かたち、保健婦さんからこの老人の死を伝えられました。


いくらなんでも、あの時の会話が最期になろうとは・・・。


やはり、あの時は生への執着が声を高くして泣かせたのでしょう。


この老人が残した金の指輪、もらって来なくてよかった・・・。


これは当然この家に残しておくべきだ・・・


のちのちまでも、あの指輪を嫁さんが指にしたとき、かならずお父さんを思い出し、供養をしてくれることでしょう。


わたしの真心は、金も銀もほしくはなかった、あの言葉だけが、わたしには何ものにも勝る贈りものでした。